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奧本 泉 (おくもと いずみ)


子供のころから人形遊びが大好きでした

人形「で」遊ぶ というよりは 人形「を」遊ぶ子供でした

縫いぐるみではない最初の人形らしい人形は

「まりちゃん」という塩ビのものです

2歳のときに 近所のお宅にあったものを

どうしてもほしくて いただいてきました

次いで「ゆみちゃん」が妹の元に来ました

そしてほかの少女たちの多分に漏れず

リカちゃん人形でも遊び始めました

しかし

お洋服をたくさん持って 着せ替えて遊ぶよりも

人形そのものを「作る」ことが大好きで

布や粘土 紙人形も よく作っていました

そして小学校3年生の大阪万国博覧会

「空いているから」という理由で入った

「せんい館」のスロープに立っていた

おじさんの大きな不気味な人形を見て

忘れられなくなっていました

(それが四谷シモンによる「ルネ・マグリットの人形」であったことは

のちに知ることとなります)

しかしまだまだ お人形遊びが好きなただの女の子でしたので

自作の縫いぐるみ人形に洋服を着せ替えて 遊ぶ日々が続きました

友達へのプレゼントと言えば

まず 自作の縫いぐるみ人形でした

かなり 迷惑だったと思います

中学生の頃になると

縫いぐるみでも生意気に関節をつけてみたり

針金を通してポーズをつけられるようにしたりと

工夫をしながら 楽しんでいました

高校生の頃は ロックにはまっていたので

ミュージシャンの指人形や 紙人形を友達と作ったりして

遊んでいました

そして 

大学を出ようか という頃でした

四谷シモン という 人形作家の作品を見て

今までの 可愛らしいだけではない人形の世界が

縫いぐるみや操り人形 木彫りの民芸品やアンティークドールでもない人形の世界が あるのだ

がーん! と きました

すぐに作品集を パルコの本屋で購入し

毎日眺めていました

そこには 人形の作り方を教える学校がある と 書いてありました

まだ学生でしたので

わあいいなあ この学校に入ったら こんな人形が作れるようになるのかな

美術の素養が全然なくても 作れるのかな

想像しつつも憧れているだけでした

そして いつか この学校に 行ってみたいな

と 思っていました

大学を出て なんとなく フランス語を習ってみたいと思い

アテネ・フランセに 通い始めました

そしてある時

「わたしね 四谷シモンさんの人形が 好きなの

人形を作る学校も あるんだって」

と おしゃべりしていたら

「あら 原宿の駅に 広告が出ていたわよ」

と お友達が 教えてくれたのです

勝手に 新学期は4月から! と 思い込んでいたので

では 見学にだけ 行ってみましょうと

2月の寒い日の夕方

駅の看板の地図を見て 迷いながら 向かったのでした

すると

いつでも始められますよ

との言葉に すっかりその気になって

「明日からでもいいですか?」

と 

次の日の夕方から エコール・ド・シモン 四谷シモン人形学校に

入学したのでした

初めての人形は 教材を直しながら

作り方の手順をざっくりと 学んでいく というもので

その

最初の日が 楽しくて 楽しくて

次の日が 待ち遠しくて たまりませんでした

その日から かれこれ 30年以上

エコール・ド・シモンで

人形を 作っています